まとめて合成するか?1体ずつ合成するか? 期待値と分散
問題
パズドラのようにモンスターを強化するために他のモンスターを合成するゲームに関する問題です。 簡単のため、以下のモデルについて考察します。
- 強化対象のモンスターをAとします
- Aに合成されるモンスターはすべて同一種類のモンスターであり、それをBとします
- あなたはBを30体所持しています
- 一度の合成で合成可能なBの最大数は5です
- 一度の合成について、確率0.6でその合成は大成功します。確率0.4でその合成は成功します
- 各合成が大成功するか成功するかは独立に判定されます
- 所持しているBが0体になるまで、あなたはAにBを合成できます(合成回数に制限は存在しません)
- Aに経験値の上限は存在しません
このモデルの肝は「30体所持しているBをどのように分割してAに合成するか」です。
直感的に、どのように合成しても大成功するBの数の期待値は変わらなさそうです。 一方で、まとめて合成するか、または、1体ずつ合成するかで大成功するBの数の分散は変わりそうです。
考察
期待値と分散について考察します。 確率分布については、次回の記事でPythonを用いて計算します。
準備
以下の記法を導入します。
- : 回目の合成に用いるBの数とします。
- 合成回数が30より小さい値 である場合、 とします。
- : 回目の合成が大成功するならば1、成功ならば0をとる確率変数とします。
- : 大成功するBの数を表す確率変数とします。
ポイント
以下が成り立ちます。
- は確率0.6で1をとるベルヌーイ分布にそれぞれ独立にしたがっている
期待値
結論は、どのようにBを合成しても です。 直感通り、合成のやり方に依存しません。
まず、 です。
期待値の線形性より、 です。
さらに、ベルヌーイ分布にしたがうため、 です。
したがって、 を得ます。
分散
結論は、 です。 直感通り、まとめて合成するほど分散は大きくなります。逆に、1体ずつ合成すると分散は小さくなります。 例えば、5体ずつ6回に分けて合成すると、分散は36です。 一方、1体ずつ30回に分けて合成すると、分散は7.2です。
まず、 です。 はそれぞれ独立なので、 です。
各項の定数を分散の外に出すと、 です。
さらに、ベルヌーイ分布にしたがうため、 です。
したがって、 を得ます。
まとめ
大成功する数について、直感通り、以下が成り立ちます。
- 期待値: どのように分割してBをAに合成しても一定
- 分散: 分割後の各合成数の二乗の和に比例する
- 可能な限りまとめて合成したときが分散は最大となる
- 可能な限り分割して合成したときが分散は最小となる